5時間半 徒歩の旅

美祢線「美祢駅」始発の長門市行き(7時前)に乗車。山陰本線に乗り換えて「長門三隅駅」に8時に降りた。目標は、山陰本線「玉江駅」。歩く県道64号線は「狭い」「アップダウンが激しい」けれども「海岸線が美しい」の「美しい」という評判でこのルートを歩くことに決めた。

45歳の11月、宮崎駅から延岡、そして高千穂を経由して阿蘇高森駅まで250キロを5日で歩いた。その当時のヤッケとズボンで歩いた。今月「11月」には個人的にいろいろな思いが重なることがあり、最近では東萩駅から農園。長門市駅から農園など11月は私が歩く月になっている。


三隅・飯井・三見・玉江の集落はすべて海沿い。つまり海抜数メートルの低地。けれども集落の境界には大きな山が鎮座していた。今回のルートでは越えなければならない3つの山が立ちはだかった。なかでも三隅から飯井までの山越えは急勾配、山のなかでは猟犬が吠えまくり銃声がこだまする。いつ手負いのイノシシが飛び出すかという心配もくわわった。両手に竹を持って人間四駆で歩いた。


飯井を通過するときお婆さんが「お弁当とお水はもっちょってかの」と声をかけてくださった。ここから三見までの峠は歩くには大変だと教えてくださった。そのとおり山道はけわしかった。


三見で、どこまで行くのかと畑のお爺さんが聞いてくれた「玉江までの山越えはホネが折れるよ」と。


三隅駅から5時間半で玉江駅にたどり着いた。私がイメージしていたコースは、宮崎の青島から日南までのようなリアス海岸線。ところが山陰の海岸線は起伏にとんでいた。気力と体力がまだあることを神様と母に感謝をして美祢駅にもどった。次は下関から長門市のブルーラインに決めている。滝部温泉で1泊コース。


『惜福』


 幸田露伴の教えに、「惜福」というのがあります。

 たとえば、有給休暇が二十日間あった場合、その有給休暇を「権利だから」といって全部使い切ってしまうのではなく、控えめにして少し残しておきなさい、という意味です。

 つまり、自分に与えられた好条件、都合のいいことを使い尽くさないで、少しは遠慮しなさいという教えです。


(PHP研究所:鍵山秀三郎「一日一話」より引用)