雨の風情がよかった

「足立さん、何歳ですか?」と厚狭の配達先でおばあさんから尋ねられた。「秋に古希をむかえます」と言うと「お元気じゃね」と。雨でも照っても、年中同じ曜日の同じ時間に配達しているからと言われた。


先週の月曜日は携帯電話を農園に忘れて家内に中継してもらった。今朝は出発してしばらく走り財布を忘れていることに気がついた。運転免許証も入っている。

農園に引き返して部屋を探したが見つからない。きのう運転した家内の車の足元に落ちていた。


それにくわえて耳が遠くなったのかもわからない。カーラジオや農園のテレビの音量が大きいと家内がたまに言う。朝、カーラジオのボリュームが大きいと思うときがある。きのうのボリュームが大きいまま。


気力も衰えている。数年前は配達から戻り草刈機をかついで日が落ちるまで汗をかいた。いまは日曜日の早朝、涼しい2時間ぐらいの草刈りしかできない。といっても目にあまる雑草になったら炎天下でもやらざるを得ないが。


アルコールも量が少なくなった。ハイボール9%ロング缶を数本あけて寝酒に焼酎かウィスキーストレートを毎晩やっていたが、飲まないではなく飲めなくなった。


家内が口やかましく「ハンカチもったかね」など背中にかける言葉に「やかましい」と言うこともなくなった。


歳相応のくだり坂を歩んでいる。


田村正和が77歳。あと7年かと漠然と思ったとき「いや明日かもわからない」と。

いまこそ、私の道、私の人生を歩まなければならない。


雨の風情がよかった。