菊川画廊探訪

開廊45周年の菊川画廊が展覧会を催している。


県立美術館の催しはできるだけ足を運ぶようになったのは、30年ちかく前、画廊とはまったく無縁の生活をしていた私が出会った画廊のあるじ菊川俊雄さんの影響。


遠近法でよく描かれている作品、よくわからない抽象画などとにかく鑑賞する回数で見えてくるものがあると信じている。

けれども、私にはよくわからない作品の鑑賞を、菊川さんがみちびいてくださるとマジックのように作品が迫ってきた。


旅は遠近を問わず趣味。

知らなかったその地域の歴史や文化はGoogleより現場に行くこと。そしてガイドをお願いする。ガイドは正式な人でも、そこらのお年寄りでもかまわない。


安心院を深掘りしたいと行った。有名なスツポン料理やワインではなく「鏝絵(こてえ)」家を新築するとき、かかわる大工などの職人のなかに漆喰壁を塗る左官職人もいた。

逗留する旅館もないので施主の自宅に泊まり漆喰の技をふるった。それが完成したとき逗留中にお世話になった施主に縁起モノを鏝で掘る。それは鶴亀や恵比寿さんなどを色彩ゆたかに。

そのガイドを地元の古老にお願いした。約2時間、50はあるといわれる鏝絵の代表的な作品を歩いて解説してもらった。


わかったという顔で帰るより、少しは本当に理解して帰ったほうがよい。

それは、たくさんの見るべき場所をわかったふりをして素通りした私の旅の反省。わからないことを「わかった」と言うほどつまらないことはない。


浮世絵展覧を県立美術館に観に行ったとき。なんとなく作品を映し出すライトが暗いと思って小声で聞いた。

江戸はロウソクのなかで作家は作品を描き、観る人もロウソクの灯りなどでした。

この作品をこうこうと照明をあてることは作品とはちがうものになります。


作品の鑑賞がわからないとき「わかりません」と言えば、みちびいてくれる菊川画廊です。