懐かしい男

小野田市に食べ処「海将」があった。イケスに地元の魚が泳ぎ、肉も魚も味わえる繁盛店だった。10年ぐらい前、わたしが養鶏をはじめた経緯をローカル紙が伝えた。

夜中に「来週からタマゴを納品できるかね」と電話が大将からいただいた。後日奥さまが「あの新聞記事を読んで、どうせ買うならここに変えよう」とつぶやいたらしい。単価は聞かずに毎週180個の注文。

納品で大将(50歳ぐらいか)に教わることが多かった。例えば、雨続きで客足を心配するわたしに「客足が少ないことを雨のせいにしたらいけん。旨いものなら雨でも来る」


繁盛店を半年あとにやめると言われたのは2年前、奧さまの父親、義父が営む浄化槽管理会社を継いでくれと頭を下げられた。彼は店をやりながら大型免許をとりに自動車学校に通い取得した。大勢の常連客に惜しまれのれんを下ろした。


その彼が、農園の浄化槽を管理していた。わたしの留守中に来園し社長名刺を置いていた。懐かしくて名刺のアドレスに近況を伝えた。今朝、彼らしいぶっきらぼうでも味のある返信が届いた。